課題別研究
日本福祉教育・ボランティア学習学会では、学会活動を発展的・継続的に推進していくために、課題別研究のテーマを毎年定め、学術大会では研究報告やディスカッションの場を設定し、チーム研究による3年間の蓄積を行い、その成果を学会機関誌に特集論文として公表しています。
現在行っている課題別研究は、次の3つです。
SDGsと福祉教育・ボランティア学習(2022-2024年)
国際的動向を踏まえながら、SDGsと福祉教育・ボランティア学習の関係を問うとともに、求められる教育・学習の理論・技法を福祉教育・ボランティア学習実践の観点から明らかにすることを主題としています。
今大会では、3カ年の研究を踏まえ、SDGs運動を組み直す福祉教育・ボランティア学習の可能性と、その可能性をもつ実践及び実践論について報告し、ディスカッションを行います。
「社会福祉・介護福祉検定」のレリバンス(2023-2025年)
今大会では、全国福祉高等学校長会の創設時からの歩みを辿り、高等学校における福祉教育実践の意義とその価値を整理するとともに、校長会が2015年度より実施している「社会福祉・介護福祉検定」の実施及び結果等から検定に向けた取組や資格取得による生徒の福祉観やキャリア形成・社会的価値等を抽出・分析して報告します。
また、前大会の「社会福祉・介護福祉検定」の量的データに基づく分析を踏まえ、検定が福祉を学ぶ高校生や社会にどのような存在かという質的データの整理・分析(仮集計)を報告し、さらに、実証的調査(量的及び質的データ)から「社会福祉・介護福祉検定」のメリットと課題についても整理し、高校福祉教育の新たな地平を展望することを目的として取り組みます。
インクルーシブボランティア:『誰もが参加できる』を目指して(2024-2026年)
「インクルーシブボランティア」とは、年齢や国籍、病気、障害の有無等にかかわらず、活動したい誰もが合理的配慮のもと、その人にあった多様な形での参加ができるボランティア活動を指します。「誰もが参加できる」地域共生社会を目指すには、このインクルーシブボランティアの広がりが欠かせません。しかし、現実には誰もがボランティア活動に参加できる訳ではなく、特にコミュニケーションが苦手で人間関係構築に困難を抱える人は活動に結びつきにくい傾向にあります。そのため、活動の現場でコーディネーションに携わる者はモヤモヤを抱え、「インクルーシブボランティア」の必要性を痛感しています。現場ではその実践知こそ積み重ねていますが、理論の確立はできていません。
本研究では、「インクルーシブボランティア」の概念を改めて検討し、理論化をめざして実践に資するものを生み出すことを目的に、このテーマに関心を持つ多様な分野の参加者を得て、インクルーシブボランティアを多面的にとらえて議論を積み重ねます。
課題別研究の過去のテーマは以下の通りです。
2010-2012 | 福祉教育とメンタルヘルス |
2011-2013 | “いのちの持続性”と福祉教育・ボランティア学習 |
2012-2014 | “サロン”の可能性を探る福祉教育・ボランティア学習 |
2013-2015 | 青年期における社会福祉の学び-高大接続- |
2014-2016 | シニア世代と共にコミュニティを拓く ~シニアボランティアの育成に向けて~ |
2015-2017 | 食でつながるコミュニティ |
2016-2018 | 合理的な配慮は福祉教育・ボランティア学習を生み出すか |
2017-2019 | 共生社会を創造するサービス・ラーニングの評価 |
2018-2020 | 介護等体験の教員養成における現状と学びとしての課題 |
2019-2021 | 多文化共生とボランタリズム |
2020-2022 | ポストコロナ社会の福祉教育・ボランティア学習の価値と実践の問い直し |
2021-2023 | 『語り』をめぐる福祉教育・ボランティア学習の可能性 |
ふく・ボラサロン
研究に関心をもつ実践者と研究者が、日頃の実践や研究活動への「想い」を共有することで接点を見出し、これからのそれぞれの実践・研究活動へ向けて継続的で相乗的な関係をつくることを目的として、毎年の学術大会の中で開催しています。学会の会員外でも参加できます。