会長あいさつ

私たちは災害、新型コロナウィルス感染症など、幾多の危機に直面してきました。危機に面した時、差別や偏見、そして憎悪が顕在化することを何度も経験してきました。それでも人が人として人と関わり続ける営みは止まることはなかったことも、事実として知っています。そのような事実を、私たち一人ひとりに内在化される価値としていく営みが問われています。従来の社会の枠組みを越えて、さらには福祉や教育の隙間を越えて、まさに福祉教育・ボランティア学習のプロセス、あり方を探求していかなければなりません。

3年間のコロナ禍を経て、例えばスマホ決済や交通系カード決済も進み、店頭で現金支払いするのは遅れている人のようで少し恥ずかしくなったりするのも妙な感じです。「いつの間に」と驚き、「そういえば」と気付いたりします。「私」は取り残されないだろうか、隣の方はついていけるのだろうか…人は「くらし」を思い描き、歩み、この時代を生きていきます。自分や他者の「くらし」を思い描き、共に歩み、この時代を生きていくために、さまざまな側面で人の生き方、社会のあり様が問われるこの時代にあって、本学会は研究・実践をさらに発信・提言していかなければならないと決意しています。

 私たちが創造しようとしている「共に生きる社会」は、抽象的なことではなく、個別、具体的に、私たちが責任をもち自覚することから始まります。当事者つまりミクロに近づき、または私たち自身が当事者であることに気づくこと。当事者であるミクロの課題に個別・具体的に取り組むこと。それによって、「場」の変容をもたらすことになれば、それが「個」と往還します。問題は、そこにどのような「学び」があり、「自分がこの社会にどのように関与しているのか」ということがわかるようなエピソードがあり、人間関係をいかに豊かにするという実感を生むのかということでしょう。

 福祉教育・ボランティア学習の「・」は、固有名詞として「福祉教育・ボランティア学習」を用いることによって、暮らしの当事者に近づこうとする意志を表しています。それは、学びの循環を創造していこうとする努力や内省を研究者・実践者に求めようとする意志です。また、「教育」と「学習」という言葉を学会名としていることの責務と意義は、計り知れず大きいと考えます。 「福祉教育・ボランティア学習」の世界。共に研究・実践していきましょう。

日本福祉教育・ボランティア学習学会
会長 野尻紀恵

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